相手に自分の考えを伝える力を上げるために、例えを使うことをお勧めしています。「〜のような」と何かに例えられると、よりその内容のイメージがクリアに伝わってきますよね。
ピラティスの時も、インストラクターが「頭を誰かに引っ張られるような感じ」とか「お腹と背中の間に板が挟まっている様にイメージして」などと言われると、ただ筋肉や体の動きの説明をされるよりもインストラクターの言いたい事が明確に伝わってきます。
そしてコーチングの時も例えはとても有効です。コーチがクライアント(コーチングを受ける方)の状況を何かに例えることがあります。最近見たコーチングのデモでは、コーチがクライアントさんの話を聞いて「まるで箱の中にギューっと押し込められているみたい」に感じる、という例えを使っていました。
それまで仕事のパートナーとの関係にモヤモヤを感じ、ビジネスの方向性に関する悩みを話していたクライアントさんは、その例えを聞いて自分がどういう状況にいるのか改めて明確なイメージを持って理解された瞬間でした。そしてそれからのセッションは、どうやってその「箱」から抜け出すか、そもそもその「箱」は自分が勝手に作り出している「箱」なのではないかと話が大きく展開していきました。
この様な例えがある事で、クライアントさんは自分の状況を客観的に眺めることもできるし、ただ頭で論理的に考えるだけではなく感覚や感情も動員して考えることができます。私も、なかなか自分のありたい姿に近づかない気がするというクライアントさんに、「まるで波が寄せては引いていくようですね」という例えを使いました。
私はクライアントさん自身に自分の状況を例えてもらうこともよくします。「今の状況を色、形、動物など何かに例えると何に例えられますか?」などと聞きます。何かに自分を例えるということは普段あまりしない事なので???と逆に思考が固まるクライアントさんもいらっしゃますし、面白がって発想が広がっていくクライアントさんもいらっしゃいます。
いずれにしても気の利いた例えでなくても良いのです。自分にシックリとくる例えが出てくれば良いのです。もしくはその場で例えが出なくても、どんな例えがシックリとくるのかということを考え続けることも、自分の取り組みたい物事の本質は何なのかということを考える機会になります。
又どんなイメージの自分が理想なのかいうことを例えを使って考えてもらうこともあります。例えば、これから行う重要なプレゼンの場で、プレゼンターとしてどんなイメージを打ち出していたいのかという様な具合です。「太陽の様な暖かさ」をイメージする方もいれば「船のキャプテンの様に周りを引っ張っていく」プレゼンターをイメージする方もいらっしゃるでしょう。ご自分の醸し出したいイメージが明確であれば、それに合わせてどの様な言葉選びをすれば良いのか、質疑応答の時にどの様な受け応えがそのイメージに近くなるのか、と行動の指針になったりもします。